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Ghana Basketガーナのかごの話

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ガーナのかごのこと

このかごは、ガーナ北部の小さな村で編まれました。原料はギニアグラスという草の茎です。生産者であるガーナの女性達はバオバブの木の下に集まり、おしゃべりをしながらみんなでかごを編んでいます。

Sololaのかごは、ガーナ人が代表をつとめるかご編みグループによって作られています。オーナーのデザインをもとに、形や色などを生産者と相談しながら決めています。相談の中で、ときには生産者がより作りやすい形を選ぶ事もあります。当初のデザインと違っても失敗の少ない形状を選ぶことが、結果的に「質の高い商品」を生み出すのです。この地域一帯はかご編みが盛んですが、それは主に丸や楕円形のシンプルなかごであり、Sololaのようにパーツがいくつも分かれた複雑なデザインに対応できるグループはここ以外に見当たりません。茎のよじり、かご編み、内袋の縫製、付属品の取り付け、取っ手をくるむ革のなめしと縫い付け、これらすべての行程を村で行っています。

このかごはとても丈夫で長持ちするのが特徴です。その秘密は、原材料であるギニアグラスの茎の加工法にあります。ギニアグラスはそのままでは硬く、曲げると折れてしまうため、かごに使う事はできませんが、編む前に茎を割いて縒(よ)ることで、しなやかに曲がるようになり、かご編みに適した素材に変身します。加工法はまず、茎の真ん中あたりを裂き、台にのせた茎を手のひらでぐるぐる縒ります。すると、回転する力がたがいに反発しあって、ねじれたままぴたっと固定されます。台には古くなったビーチサンダルの裏や木材の端が使われ、なかには自分のすねを台にする強者もいます。 日々の農業や家事で鍛えた強い手でないと、すぐ真っ赤になってしまいます。地味で辛抱のいる仕事ですが、かごの良し悪しを決めるだいじな作業です。

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かご編みの歴史

この地方で編まれるかごの定番は、半球形のラウンド•バスケットと呼ばれる丸かごです。Sololaではこのカラフルな丸かごも扱っています。日本のみならず欧米でも人気が高い丸かごの魅力はどのようにして生まれたのでしょう。その秘密は、この地方のかご編みの歴史にありました。

このかごの原型は、この地域一帯に住むグルンシという民族が使っていた地酒の漉し器という説があります。(写真参照)ガーナ独立後の1960年代、当時の大統領が開発の遅れたガーナ北部の産業振興のための開発政策をとり、この地方の地酒の漉し器を特産工芸品にできないかという動きがあったそうです。この漉し器は、ベチバグラスという草の茎で作られ、染色されておらず、取っ手がなく、編み目は粗めでした。また、茎を縒るときに、縒り終わりを玉留めでほどけないようにしていたため、かご表面にはその玉留めがいくつも出ていました。

一方、いまのラウンド•バスケットは、海外輸出向けの「商品」で、クマシという都市から購入するギニアグラスという草が原料です。漉し器との違いは、縒り方を改良することでかご表面の玉留めがなくなり、見た目がすっきりしました。編み目もより緻密になり、かごに取っ手と色がつきました。80年代末にかご輸出が本格化してからは、楕円形などの新デザインが開発されました。染色されたカラフルな水草を駆使して、織り手はさまざまな柄の組み合わせを編み出しました。鮮やかな色が欧米の買い手に喜ばれたため、使う色がどんどんカラフルになっていったようです。こうして、より手のこんだ装飾性の高いかごが誕生しました。もともと産地にあった技術に、企業、政府関係機関、援助団体をはじめとする内外からの働きかけや提案が加わり、漉し器は約半世紀かけて輸出商品へと成長発展しました。その陰に、試行錯誤を続けた生産者の努力があったことは言うまでもありません。

こうして、地酒の漉し器はラウンド•バスケットになり、かご編みはりっぱな輸出産業へと成長しました。地域ではかご生産に携わる人が増え、人々の生活のなかに農業と並ぶ「かご編み」という大きな仕事が生まれたのです。じつは、いまグルンシの人々は原型といわれる地酒の漉し器を使っていません。酒造りが自家用から商売になるとともに、お隣の民族であるタレンシが使う「ギンカ」と呼ばれる漉し器のほうが丈夫で、一度にたくさんの酒が漉せるため、グルンシの漉し器は使われなくなりました。しかし、その漉し器は華麗な変身を遂げ、現代に技術が受け継がれました。

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生産者とかご作り

このかご産地の州は、ガーナで最も都市化が進んでおらず、また、最も貧しい州のひとつです。産地が乾期になると、雨期には青々と茂っていた緑が消え、厳しい暑さが始まります。辺り一面が乾いた大地と化し、ほかに目立つものといえば、家とヤギだけ。Sololaのかごの生産者は主に女性ですが、産地では老若男女がかご編みに携わっています。日が沈めば家に帰り、日が昇ると仕事を始める。自然の流れに沿い、驚くほどゆっくりとした時間の中で人々は暮らしているように見えますが、女性は家事と育児、そして大切な農業のかたわらにかごを編むため、じつはとっても忙しいのです。

そんな彼らにとって、Sololaのかごは品質にこだわり、大きさや配色すべてが厳しく決まっているため、その通りに作るのは想像以上に大変です。彼らの暮らしのなかでは、用が足りてさえいれば、実用のかごには十分価値があるからです。代わりに、現地の流通価格より高く買い取ることで労働に見合った賃金を支払っています。そこにはガーナののんびりした土地に住みながら、先進国の厳しい規格に合わせる努力を続ける生産者へのねぎらいと感謝の気持ちが込められています。かご作りで得る現金収入は、生産者の生活の足しになったり、彼らの子どものために無くてはならないものです。

村の生産者が一生懸命編み上げたSolola自慢のかごバッグです。手に取ると、遠く離れたガーナの村から編み手のおしゃべりが聞こえてくるかもしれません。

Special Thanks
「かご編みの歴史」
情報提供:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 牛久晴香氏
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1/かごを頭に載せてものを運ぶ少年。Photo : The Power of NAIJA@ 2010 kuwabow 2/女性たちのかご編み風景。3/かごバッグに使われる手編みの小さなパーツ。4/右:現在のラウンド•バスケット。 左:グルンシの元祖漉し器。ラウンド•バスケット発祥地といわれるガンビブゴの編み手グループに再現を依頼した貴重な写真。(写真提供:牛久晴香氏) 5/頭上運搬で物を売り歩く人。今はプラスチック製容器が主流。6/緑豊かな雨期は、バオバブの木に実が垂れ花が咲く。7/Solola自慢のかごバック。写真はトロピカルバッグのマルチカラー。

Nigeria Basketナイジェリアのかごの話

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ラフィアのかごができるまで

このかごはラフィアという椰子の葉から作られました。ラフィア椰子はナイジェリアのあちこちに生えている身近な植物です。葉を刈った後乾かし、色が緑からベージュに変わってから使います。細く裂いた葉を重ね、丁寧に手で編み上げます。このかごの産地はナイジェリアのカノ、ヨベおよびニジェール南部にまたがります。見た目は同じかごですが、情勢の変化と生産者の状況によって産地を変えています。北部の市場などで使われるかごは、革の持ち手も、色などもついていないごくシンプルなものですが、素朴なそのかごが好きで、革の持ち手を縫いつけてみたところ、たいへん使いやすくなり見た目も気に入りました。それから、かごの生産者を探し、革取っ手の縫製を覚えてもらい、Sololaオリジナルのかごが生まれたのです。

パートナーとの出会い

ナイジェリアは、情報が少ないうえ、激しい競争社会であるため、よい生産者を見つけ信頼関係を築くことがとくに難しい国です。生産者探しの途中、協力的な相手やかごの技術的知識を持つ人がなかなか見つからず、行く先々で商人からべらぼうな値段をふっかけられたり、何時間も頼みこんだ話が破談になったり、がっくりため息をついていた時です。恥ずかしそうに照れ笑いをしながら、私の後ろに立っていたのが今のかご編みのパートナーでした。かごの編み手でもある彼は、技術的な知識があるため、お互いがでできることとできないことを分かったうえで、デザインや色の相談ができました。何より嬉しかったのが話を一生懸命聞いてくれたこと。ナイジェリアでは珍しいとても控えめな性格の彼ですが、さすが商人の民ハウサ族。驚くべき行動力の持ち主で、かごだけでなく毎回どこからか新しい手仕事を運んできてくれるのです。

かごのつくりかた

作り方は、まずラフィアで細長い帯を編みあげます。編んだ帯を縄文土器の様にくるくると巻き上げ、隙間を植物の繊維で縫うようにして接合します。仕上げに表面のケバ立ちを除き、革の取っ手を縫い付けて完成です。帯の柄と柄をつなぎ合わせるため、帯を編むときは仕上がりを計算しながら柄の位置を決めていきます。葉の染色に使うのはおもに化学染料ですが、黒と茶色だけは自然のもので染めます。黒は泥染め、茶色はギニアコーンによって染色されています。

このかごは、どこか男性的で、おおらかで飾り気のないところが素敵です。和風、北欧、フランス、モロッコ風など、どんなインテリアにもよく合います。中に入れるのは、スリッパやお子様のおもちゃ、乾いた洗濯物や電源コードなど、使い道は様々です。見せたくないものをかごにまとめて入れておけば、いつもの収納もおしゃれなインテリアに。ぜひ、普段の暮らしに手編みのかごを取り入れてみて下さい。同じ技法で編んだラグや足マットもございます。

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1/かごの仕上げをする作り手。2/のぞくと底にもカラフルな色が!3/同じ素材•技法で編まれるラフィアマット。